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現在のわが国の社会保障を財政面からみると、生活保護や母子・老人・身体障害者・精神薄弱者に対する社会福祉サービスからなる公的扶助と、医療、年金、失業・労災などの社会保険を軸とするものに分けることができる(なお、生活保護のみを公的扶助とし、社会福祉と区別する分類法もあるが、租税を財源とする点では同じである)。
公的扶助は、租税を財源として生活困窮者などに給付するものであり、憲法25条の理念にもとづき、すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を国家が保障するものである。
最低限度(ナショナル・ミニマム)の給付にとどまるのは、所得の再分配という性格から、一定限度を超える給付は納税者の納得をえられないからである。
そのため、かなり厳格なミーンズ・テスト(所得・資産調査)が給付決定の前提とされるのが一般的である。
社会保障の一環をなす社会保険は、医療、年金、労災、雇用(失業)保険に分けることができる。
(注) 社会保険とは別の社会保障制度として「老人保健制度」があるが.その財源は,医線保険の保険者と国が負担している。
先ず、主な公的医療保険は被用者保険と国民健康保険(国保)の二つに大別され、さらに高齢者のみを対象にした老人保健制度が別途設けられている。
被用者保険は、政府管掌健康保険(主として中小企業の被用者が対象)、組合管掌健康保険(主として大企業の被用者が対象)、共済組合(国家・地方公務員、公共企業体職員、私学教職員が対象)という三つの職域別保険に分けられる。
この他に政府管掌健康保険と同様に国が保険者となっている日傭者健康保険と船員保険が存在する。
また、商業や農業などの自営業者、医師、弁護士などの自由業の人達を対象とする地域保険たる国民健康保険がある。
これは市町村などが保険者となっているが、加入者数が最も多い。
この他、各医療保険制度の加入者のうち70歳以上の高齢者(寝たきりの場合は65歳以上)を対象とした老人保健制度がある。
前述のように、1983年2月の老人保健法により設けられたもので、それまで被用者保険の被保険者であった者が退職後の高年齢になって加入することから生じる国保の負担が過大になるのを防止する趣旨を持つ。
そのため、費用は国、都道府県、市町村と、各医療制度の被保険者が負担するものとされている。
一方わが国の公的医療保険制度はこのように社会保険の仕組みを採っているが、実態はすべてが保険料収入でまかなわれているわけではない。
共済組合を除き、医療給付費、老人保健拠出金の一定割合が国庫負担(一般会計)によってまかなわれている。
とりわけ、国保は1996年度予算で医療給付費の50%を国庫負担に依存する状態で、社会保険の実態を有していないとの見方もできよう。
1961年の国民皆年金制度のスタート以来、わが国の公的年金制度は様々な見直しがなされてきたが、とりわけ1985年に破綻しかけた国民年金を救済するため大幅な制度の財源調整を含む改正がなされた。
その結果、年金制度の一元化を目指して創設された基礎年金を1階部分とし、その上に2階部分として被用者の各職種ごとに、拠出額、給付ともに報酬比例の厚生年金と共済年金を上乗せする形とする2階建ての年金制度となっている。
この基礎年金は、全国民共通の年金として、旧国民年金に被用者年金たる厚生年金と共済年金から財源を拠出させて創設されたもので、現在はこの部分を「国民年金」と呼んでいる。
なお、公的年金を補完するために、3階部分として私的年金たる厚生年金基金が上乗せされる(共済年金は職域相当部分が制度自体に組み込まれている)。
自営業者などが加入する旧国民年金には、任意加入の国民年金基金が上乗せされているだけである。
2階部分を構成する被用者年金制度は、厚生年金保険の他に共済年金として、国家公務員等共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済組合、農林漁業団体職員共済組合(各組合の連合会の他、連合会に属さず、97年4月に厚生年金に統合きれたJR、NTT、JTの各共済組合がある7制度からなるが、給付水準、保険料率、支給開始年齢、積立金等にかなりの差がある。
その打開策として、これらの公的年金制度を一元化して再編することが大きな課題となっている。
公的年金を補完する私的年金制度としては前述の厚生年金基金の他に民間の企業年金(適格・非適格の両退職年金)や個人年金があるが詳細は後述する。
なお、公的年金は被保険者の老後の生活保障を担うものであるが、障害年金として疾病やケガによって一定の障害状態になったときにその程度に応じて支給される障害年金や被保険者の遺族に対する遺族年金が、一定の要件を充たした場合に支給されることに留意しなければならない。
民間保険会社は、死亡保障のある保険(定期保険、終身保険、養老保険など)や医療(疾病)保険(特約)や傷害保険(特約)を販売し、社会保険を補完している。
もっとも、死亡保障面では公的年金の遺族年金のみでは十分でないため、むしろ民聞の生命保険会社の果たす役割の方が大きくなっている。
雇用保険は、労働者の生活保障の一環として、労働者が失業した場合に必要な給付を行い、その生活の安定を図るとともに、就職活動を容易にすることを主要な目的とした政府管掌の社会保険である。
わが国の私保険あるいは民聞の保険としてはこのような失業を対象とした保険は存在しない。
就業意欲があるのに失業しているのか保険金目当ての失業(故意の保険事故招致)であるかは、いわば被保険者の内心の意思の問題であり立証することが困難だからである。
このような保険では情報の非対称性によるモラルハザード(後述)が発生しやすく安易に失業する人をうみかねないが、公的な雇用保険のようにそれを抑制するシステムを構築しにくいことが大きな理由である。
労災保険(正式には「労働者災害補償保険」)は、業務災害または通勤災害による労働者の負傷・疾病・障害・死亡に対して必要な給付を行い、被災労働者やその遺族の生活保障を行うことを目的とする政府管掌の社会保険である。
歴史的に、法律上の手当てにより、市民法の故意・過失責任を修正した無過失責任への転換など労災に対する使用者責任の拡充が図られてきたが、責任を問えても補償財源が無くては画餅に帰すことから創設された制度である。
保険給付には、療養補償給付、休業補償給付、傷病補償年金、障害補償給付(身体に障害が残った場合の障害の程度に応じた給付)、遺族補償給付、埋葬料がある。
なお、同一の障害、死亡または傷闘病により労災保険の年金または休業補償給付と厚生年金などの社会保険の年金(たとえば厚生年金の障害年金、遺族年金)が併給される場合は一定の調整がなされる。
労災保険は、労災によるものに限られるが、傷害・疾病保険と所得補償保険としての機能を持つ(遺族保障は、前述のように国民皆保険となっている公的年金と調整される)。
民間の保険では、所得補償保険(損害保険会社)と所得保障保険(生命保険会社)および団体生命保険の労災上乗せ特約(生命保険会社)がこれを補完する機能を果たしている。
ただ、労災保険は自営業者や弁護士などには適用されないので、その分野では民聞の保険の役割が大きいといえよう。
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